本研究課題設定後、課題に関するドイツでの研究が急速に進んだため、計画遂行に当たり最近までの研究蓄積の整理が不可欠と判断し、平成8年度は年度計画のワイマル期の研究を軸にしつつも翌年度計画のナチス期にも一部関わる研究蓄積の批判的整理を行ない、これに実証研究をも加味してその成果をドイツ資本主義研究会、京都大学経済研究所定例研究会で発表した。すなわち戦間期ドイツ電機工業の生産過程改革に関する諸研究を、1ワイマル期における規模の経済追求型フォード・システムの直接的導入論、2ワイマル期における「ドイツ的流れ作業」の導入とナチス期におけるそのフォード・システムへの発展という見解、3戦間期における第一次大戦前の伝統の継続論に3区分して検討した結果、「流れ作業」になじまぬ分野での第一次大戦前の伝統との継続性は否定できないが、戦間期に改革された生産過程の戦前からの質的飛躍が決定的に重要であり、具体的にはそれはワイマル期に多品種生産や市況への柔軟対応を可能とする非設備投資集約型「ドイツ的流れ作業」を基調としつつ、規模の経済追求型から「ドイツ的流れ作業」までの多様な形態で、耐久消費財のみならず投資財、中間財の導入可能分野にも、また総合企業とともに資力の乏しい非大手企業にも導入され、ナチス期には「ベルト作業」への発展傾向を伴いつつも、やはり多様な変種または形態において展開されたとみるのが実態に即すると主張した。また戦間期の改革は戦後日本(トヨタ)の「オオノイズム」と同質の課題を先駆的に実施するものであったこと、それが「ドイツ固有の諸事情」を前提とした技術選択の結果であり、この関連は発展した近代と歴史的・社会的伝統との独特の結合として把握しうること、も明らかにしえたので、その旨を報告し、それぞれ専門家の反響をえた。本成果は『土地制度史学』編集委員会の依頼により同誌掲載のためとりまとめ中である。
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