1、 昨年度に引きつづき、戦後に発行された実務書や実務論文、および研究書や研究論文において、人事査定がどう取りあげられているかを検討した。その結果、実務書や実務論文は戦後ほぼ一貫して多数が刊行されていること、すなわち関心が一貫して存在したのに対し、研究書や研究論文では、1960-80ころの約20年間に研究の空白があることを発見した。空白は、当時の研究が労使関係論によってリードされていたことに関係すると思われる。また、80年代以降の研究の一部は、実証的な根拠のないまま日本の査定制度を公正性を主張するという「特徴」をもつことが明らかとなった。私としては、研究史の整理を一応完了したと思う。 2、 米国、イギリス、ドイツにおける現行の査定制度を知るための資料を、継続して収集した。米国では、労働関係NPOが査定制度にかかわる訴訟を起こそうとする労働者に援助しているらしいこと、ドイツとイギリスでは、査定制度について労働組合が強力な規制を労働協約の締結などによって加えることが明らかになった。しかし、明確にわかることは少なく、本格的な研究の必要性もまた明らかとなった。 3、 本研究の「研究成果報告書」を市販書籍として公刊できる目途が立った。そのため、その準備作業を行った。具体的には、上記の研究史の整理を公刊にふさわしく整える作業とともに、これまでの私の査定制度研究の諸成果に修正と補充を加え、公刊にふさわしく整える作業を行った。
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