1、査定制度について、戦後に発行された実務文献、研究文献、および労務管理関連の大学教科書における記述を検討した。その結果、多数の実務文献が戦後ほぼ一貫して刊行されていること、すなわち査定制度への関心が一貫して存在したこと、しかし研究文献は、1960-80年ごろの約20年間は公刊されないこと(すなわち、研究されないこと)を発見した。公刊されない時期のあることは、当時の労働研究が労使関係論パラダイムによってリードされていたことに関係すると思われる。 1980年代以降に、人事査定の研究は復活し、大学教科書でも言及されるようになった。もっとも研究の一部は、主張の根拠のないまま日本の制度を公正性を主張するバイアスをもつことが明らかとなった。 2、1960年代までの査定制度について、H造船など2社における1950年前後の制度導入時の諸資料を検討した。また1950年代の教員勤務評定反対闘争について、なぜ反対し、どのように規制しようとしていたかの検討をすすめた。しかし、十分な検討ができなかったため、そのわずかしか研究成果に反映できなかった。 3、1920年代の日米両国の査定制度の展開について、多くの新知見を得て、それを研究成果に反映できた。たとえば、松本亦太郎とScottの面識関係が推測できることを発見し、松田竹太郎による1920年代の米国実地調査を発掘できたことは重要である。 4、研究成果をとりまとめて、遠藤公嗣『日本の人事査定』(ミネルヴァ書房、1999年5月)を刊行した。3月刊行予定であったが、出版社の事情により遅延したのは残念であった。
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