平成8年度の研究は日本公社債研究所の「日経公社債情報」に掲載されている各企業コマーシャル・ペーパー(CP)発行状況と同研究所が公表する社債・コマーシャル・ペーパー格付けのデータの収集と分析に絞った。1989年度のCP発行行動の予備的な分析によるとCPを発行するかどうかは主に企業の大きさにのみ依存すると前に報告したがCPを発行する適格基準をきちんと考慮することによって企業の大きさ以外に売上・(買掛金-売掛金)比率、企業の破産する確率やメイン・バンク関係有無にも依存する。言い替えれば企業の財務状況がCP発行をするかどうかという決定に影響を与えるので1989年度のすべてのCP発行を裁定取引で説明することができない。CP発行決定を分析する際、適格基準を無視して得られる結果と適格基準をきちんと考慮して得られる結果を比較すると適格基準が有効な規則であることが示唆され、適格基準の緩和によってある企業の資金調達に影響を与える。CP発行資格を持つ企業に分析を限定すると実際にCPを発行する企業の方が、発行しない企業よりCP格付けがやや高いことが分かる。これはCP発行適格基準と、アメリカの文献で提案されたCP発行決定とCP格付けの関係とどちらかを反映しているのかまだわかっていない。平成8年10月28日にシドニー工科大学(豪)で開催された研究会で'The Commercial Paper Market in Japan'という論文について研究報告をした(旅費の一部はシドニー工科大学が負担)。
|