日本の企業が国内コマーシャル・ペーパー(CP)新規発行プログラムをアナウンスすることによって、企業価値へどのような影響を与えるかを検討した。この分析を下記の実証・部分と理論的な部分に分ける。 1.応用分析。どの企業が国内CP新規発行プログラムをアナウンスしたかを調べるのに1987年から1997年までの日本経済新聞を検索した。結果的に23社しか発見できなかった。この23社の事象研究(event study)を利用し、日本企業がCP新規発行プログラムをアナウンスすることが企業価値にどのような影響を与えるかを検討した。CP発行アナウンスは有意な超過収益率をもたらさないこと、その超過収益率は企業のメイン・バンク有無、企業の社債格付けやアナウンスの時期と統計的に連動しないことが明らかにされる。企業の標本数があまりに小さいので、これらのファクト・ファインデイングは決定的ではなく、示唆の域をでていないと解釈するのが自然であろう。この応用研究についての英文論文(The Impact of CP Issues on the Value of the Firm")を1998年12月4日-6日の間に奥池で開催されたファイナンス・フォルム集中研究会で報告した。 2.理論分析。通常の事象研究(上記のものも含む)ではモデルを推定するために2段階推定方法が使用されるがこの方法は興味のある係数を有効に推定しない。説明変数がすべて観測できる場合、興味のある係数を有効かつ簡単に推定する方法を提案した。この理論研究成果を含む英文論文を1998年8月にペルーのリマ市で開催された計量経済学会第16回南米大会と1998年9月に立命館大学で開催された日本経済学会1998年度秋季大会で報告した。
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