この三年間の研究はコマーシャル・ペーパー(CP)発行の決定要因、CP発行のアナウンス効果と事象研究の計量問題を分析した。 1. CP発行の決定要因。1989年度の企業発行行動を分析した結果としてCPを発行するかどうかということは企業の大きさ、売上・(買掛金-売掛金)比率、企業の破産する確率やマイン・バンク関係有無に依存する。すなわち、企業の財務状況がCP発行するかどうかという決定に影響を与えるので1989年度のすべてのCP発行を裁定取引で説明することができない。CP発行決定を分析する際、適格基準を無視して得られる結果と考慮して得られる結果を比較すると適格基準が有効な規則であることが示唆される。 2. CP発行アナウンスの効果。どの企業が国内CP新規発行プログラムをアナウンスしたかを調べるのに1987年から1997年までの日本経済新聞を検索した。結果的に23社しか発見できなかった。この23社の事象研究を利用し、日本企業がCP新規発行プログラムをアナウンスすることが企業価値にどのような影響を与えるかを検討した。CP発行アナウンスは有意な超過収益率をもたらさないこと、その超過収益率は企業のメイン・バンク有無、企業の社債格付けやアナウンスの時期と統計的に連動しないことを明らかにした。 3. 事象研究の計量問題。通常の事象研究(上記のものも含む)ではモデルを推定するために2段階推定方法が使用されるがこの方法は興味のある係数を有効に推定しない。説明変数がすべて観測できる場合、興味のある係数を有効かつ簡単に推定する方法を提案した。事象研究において観測できない説明変数の代わりに人工変数を使用するとどのような計量問題が発生するかを明らかにした。
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