研究概要 |
前年度からの研究の自然な発展として「厚生ポジション」という概念によって中央と地方の財源調整の評価を行った。 地方と中央は,地方交付税等で財源の再配分を行っているが,それは,端的には財源の豊かな地域(具体的には都市部)から豊かでない地域(非都市部)への財源の移転になる。この事実は都市に対して地方を優遇しているように評価されることが多い。 本年度の研究では,財政的な相互依存関係を考慮すれば,これまでの評価とは異なる結論 「戦後一貫して都市部が地方に比べて中央から高い評価が与えられてきた」 が得られることをが判明した。 さらに,地域間の人口移動に租税が及ぼす影響に焦点を当てた研究に着手した。この研究は,第一にこれまでの租税の帰着理論の成果を人口移動に応用できることを示すとともに,第二に従来の租税帰着論では考慮できなかった法人の配当分に対する法人課税と留保分へのそれとを区別して表現できることを示したことが,大きな貢献である。この研究は「法人税の地域間の人口移動に及ぼす効果について」(未発表論文)に結実した。 得られた結果は「法人への配当課税は都市部の人口を減少させ,留保分への法人家税は都市部の人口を増加させる」 というものである。
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