研究概要 |
わが国企業が国内外で発行した転換社債・ワラント債についてデータを収集し,データベースを構築した。転換率および残存額に関しては主として東証『所報』を用い,転換社債価格と取引高,および株式価格と取引量に関しては野村総合研究所から提供されたデータを主として用いた。 予備的分析(Tanigawa=Nishimura[1995])で行なった少数銘柄を対象とした分析結果が,大筋の上では一般性を持っていることを確認した。すなわち,(1)アメリカン型オプションとしてみた転換社債は,Yield Advantage(受取配当とク-ポンの差)がマイナスであるにも転換が起こっており,またその時期は,これらが変化する権利落ち日直前や償還日直前などに集中しているわけではない。すなわち,権利行使(転換)が最適とは思われない状況下でも転換が行われている,(2)転換開始および転換進渉を説明する要因を実証的に探るためロジット分析を行ったところ,転換開始にはマイナスの効果を持っていたCB取引高が転換進渉にはプラスの効果をもっているなど影響方向が異なる変数がみられること,である。ただ予備的分析の結果に比べて,転換開始時期についての計測結果があまり良好ではないので,改善を計画中である。 また転換社債の取引数量について理論的および実証的考察を行い,(3)発行時期がバブル期以前であるか以後であるかに関わらず,発行(取引所上場)直後はさかんに取引きされるが後は次第に減衰していくという事実を確認し,(4)パネル分析を行い,株式取引高とCB取引高とは正相関がみられることから,企業価値のボラティリティに関する意見の相違,および(5)株価が転換価額をいつ越えるかという事に関する投資家間の意見の相違差が,主要な転換社債の取引動機であると解釈できる計測結果を得た。
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