研究概要 |
予算制約下での地方公共団体の地域厚生極大化行動を仮定したうえで、各費目の裁量的支出額を非裁量的支出額、(地域所得+地方交付税・譲与税収入+国庫支出金収入-非裁量的面収入合計)の合計額(Y+S)、人工Xp、面積Xaの各説明変数の関数で表されることを導いた。その上で、平成7年度の全国47都道府県の歳入・歳出決算値データにより、上述の説明変数によって費目別裁量的支出額を説明するクロスセクション回帰分析を行った。歳出は、公共投資、福祉・衛生、教育、その他の4分類とし、さらに、福祉・衛生支出を民生費、衛生費、労働費に再分する。分析は公共投資IL、福祉・衛生EWL、教育EEL、その他EVL、民生費EW1L、衛生費EW2L、労働費EW3Lの各裁量的支出を、非裁量的支出IM、EWM、EEM、EVMと、(Y+S)、Xp、Xaで回帰する分析1と、説明変数のうちEWMに代えてEW1M、EW2M、EW3Mを採用した分析2を試みた。各費目の非裁量的支出はその費目における国庫支出金の平均補助率によって当該都道府県の国庫支出収入額を除することによって求めた。これらにより、以下のような結論が得られた。1,当該分野の非裁量的支出が裁量的支出に有意の効果を持つものとして、分析1と分析2の両者でIMとILの間で正の効果(補助事業費は単独事業費に対して補完的)が、また分析1でEVMとEVLの間で負の効果(補助事業費は裁量的支出に対して代替的)がみられただけであった。2,支出分野間の効果をみると、非裁量的公共投資は労働費、教育費を除いて、各費目の裁量的支出に対して有意の正の効果を持つ。3,非裁量的福祉・衛生支出は公共投資と衛生費、その他の支出に対して有意の正の効果を持つが、前2者の効果は民生費の正の効果が労働費の負の効果を凌駕していることによるものである。4,非裁量的衛生費支出は教育費支出に対して正の促進効果を持つ。5,(Y+S)は労働費を除くすべての支出に対して有意の正の効果を持っている。
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