予算制約下での地方公共団体の地域厚生極大化行動を仮定したうえで、各費目の裁量的支出額を非裁量的支出額(補助事業額)、(地域所得+交付税・譲与税・国庫支出金収入-非裁量的支出合計)YSの各説明変数の関数で表されることを導いた上で、1980、85、90、95の各年度の全国47都道府県の歳入・歳出決算値データによって、上述の説明変数で費目別の裁量的支出を説明するクロスセクション回帰分析を行い、それらの係数値の変化を考察した。分析は公共投資EIL、福祉衛生EWL、教育EEL、その他EVLの各裁量的支出を、非裁量的支出EIM、EWM、EEM、EVMおよびYSによって回帰した。これより、以下の結果を得た。1.各回帰式においてYSの係数値はいずれも5%有意の正値で、その値はEIL、EWL、EELの推計式での係数値の0.007〜0.044に対してEVLの係数値は0.052〜0.074と高く、「その他」の裁量的支出がYSに大きく依存している。2.それぞれの裁量的支出についての回帰式における同一分野の非裁量的事業費の係数値の変化をみると、公共投資では、EIMの係数値は*(80年度)→0.183(85年度)→2.456(90年度)→0.734(95年度)と変化し、1990年度に正の係数値を高めている(*はその係数値が10%水準以上で有意でなかったことを表す)。福祉衛生では、0.377→0.336→0.606→l.639と後半期ほど高い正の係数値をもつ。教育では、0.116→*→-0.241→*と、1990年度のEEMのEELに対する効果は負となった。「その他」の支出EVLでは、*→1.449→3.973→*と変化し、1985年度→90年度に正の係数値が上昇し、その後95年度に係数値が下落する(または有意でなくなる)という公共投資と類似した変化をたどった。3.非裁量的事業費の他の分野の裁量的事業費に対する交差効果をみると、教育EEMはすべての年度のEIL、EWL、EVLに対して負の歳出効果を持った。
|