中国の経済体制改革の中で金融分野の改革は急速に進んでいるが、その過程と現状をとらえることが今年度の主な課題となった。 中国経済は1989年6月4日の天安門事件以来、鬱屈するところとなっていたが、1992年春の〓小平による「南巡講話」での「改革・開放をもっとやれ」によって刺激されると、1993年後半からたちまち経済過熱が発生して94年には小売物価上昇率が21.7%と驚異的な数字を記録した。中国人民銀行は直ちに「適度な引き締め政策」を実施してその対応にあたったところ、1997年になってインフレ率がほぼゼロになったから「軟着陸」に成功したといってよいであろう。ところが、この効果は「総量規制」といった指令的やり方に負うところが大きく、金融マクロ・コントロール手段が果たしてどこまで機能していたのかが問われるところとなっている。現段階での結論は「軟着陸」は総量規制によるところが大きくても、金融マクロ・コントロール手段の整備は徐々に進められているから、その効果も評価しなければならないということである。預金準備率、公定歩合、公開市場操作などが整備されており、また銀行間のコール市場の統一化も進み市場金利のもつ意味が重要になりつつある。さらにこれまで「親方日の丸」的経営を続けてきた国家銀行の商業銀行化の目指して資産負債比率などの基準がより厳しく求められるようになっている。そして1997年9月の第15回党大回では国有企業の改革を成功に導くためにも株式市場を中心とした間節金融に大いに期待を寄せる姿勢が示されている。 中国経済の市場化、国際化の中で金融改革のもつ意味はどんどん高まっている。次年度はこれまで渉猟した資料をふまえてさらに研究を続けていくことによって、体系化された中国の金融システムについて書物を刊行したいと考えている。
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