わが国の銀行はバブル期まで日経平均株価の上昇とともに含み益を大幅に増やしていたが、1989年末をピークに翌年以降、日経平均株価の下落から含み益を急激に減らすことになった。これはわが国の銀行が株式を大量に保有しているためである。 このことは銀行のバランスシートから明らかなように銀行それ自身の株価に影響を及ぼすことになる。つまり、保有資産である株式の時価が下がり含み益が減少すれば、それに応じて銀行株も下落することになる。それゆえ、日経平均株価が下落する場合、銀行株もほぼ同じ割合で下落していくと予想される。 だが、実際には銀行株の変動は銀行ごとに異なっている。しかも、その変動は銀行の含み益の状況と密接な関係にあることも見い出された。 本年度の研究では含み益の減少と銀行株の下落に注目し、いかなる関係が存在するかを、全国銀行(都銀11行、長期信用銀行3行、信託銀行7行、地方銀行10行の合計31行)を対象に分析し、含み益が薄い銀行ほど株価下落が大きいことを見い出した。 その理由として、第1に含み益のバッファー機能に注目し、含み率の低下はリスク吸収能力の低下に結びつき、株価下落をもたらすことを明らかにした。そして、第2の理由として相互持ち合い構造の崩壊に注目し、銀行株の下落が従来の持ち合い構造を揺さぶり、安定株主の保有比率を低めた結果、株価をさらに引き下げたことを示した。
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