平成10年度はいままでの2ヵ年にわたる成果をまとめる年度としている。それゆえ、論文の形で書き上げることに集中した。もちろん、過去2年間においても論文の形で表しているが、特に中心となる研究成果をまとめるように進めた。その一つが「生保の伝染効果」(『専修商学論集』)であり、もう一つが『銀行株の伝染効果』(『証券経済学会年報』)である。 本研究の目的はわが国金融機関の特色である株式保有が株式含み益を形成し、そのことが経営にいかなる影響を及ぼしているかを分析している。その際、今日の最大の問題である不良債権問題を無視するわけにはいかない。そこで、株式含み益から不良債権を差し引いた「純含み益」という新しい用語を用いながら、経営分析を試みている。 分析方法として多くの研究者によって進められているイベントスタディーを用いている。ある事件が発生した結果、銀行株価そして生保保有高にいかなる影響を与えているのか、そしてそれは根拠のある動きを展開しているのかを分析している。 その結果、銀行であれ生保であれ、事件の影響を受けるが、それは純含み益の大きさに依存する動きを展開していることが明らかにされた。
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