戦後、わが国の銀行と生保は多くの含み益を形成してきた。なぜなら、持ち合い構造のもとで株式を大量に抱えるとともに、経済成長と共に日経平均株価が一貫して上昇を続けたからである。しかし、1990年のバブル崩壊以後、株式を中心とする含み益は大幅に減少し、わが国金融機関の経営は変化しようとしている。当然のことながら株式持ち合いの意味も薄れている。 本研究はそのようなわが国金融機関の特色でもある株式含み益に注目し、経営にいかなる影響を及ぼしているかを分析している。 周知のようにある事件が銀行株価に及ぼす伝染効果(Contagion Effects)には純粋パニック効果(Pure Panic Effects)と情報効果(Information-BasedEffects)の2種類がある。最近の研究ではこれらの効果を識別するモデルがさまざまな研究者によって展開されている。本研究では銀行ばかりでなく生保会社も対象にしながら、この現象をいろいろな角度から見ている。 まず第一に銀行分析では銀行株価に注目し、生保では契約高の動きに関心を寄せている。これらの動きを見ることによって伝染効果の有無を判断している。 次に伝染効果が存在していることを確認したうえで、純粋パニック効果なのか、それとも情報効果なのか、それを識別する作業が展開されている。このことを明らかにするため、「純含み益」を計測している。これは含み益から不良資産を差し引いたものである。その結果、銀行であれ、生保であれ、ともに情報効果が作用していることを明らかにしている。
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