本研究の目的は日本の家電産業における輸出マーケティングの研究である。本年度はまず第1に、日本の家電企業が、輸出先アメリカ市場に参入した当時のアメリカの家電市場の流通システムが如何なる状態にあったのか、解明することに重点を置いた。第2に、日本の代表的家電企業である松下電器、日立、シャープの輸出マーケティングについて分析することであった。 まず第1の課題について明らかになった点は、以下のとおりである。日本の家電企業のアメリカ市場への参入は、ラジオに始まりテレビ、テープレコーダーなど電子機器を中心とした輸出から始まった。当時のアメリカ市場はRCAやゼニス、モトローラ、GE、シルヴァニア、マグナボックスなど代表的な家電企業によって支配されていた。その流通システムはメーカーから卸売業者を経て小売業者へ、さらに小売業者から消費者へという、いわゆるツ-・ステップの流通システムが支配的であった。このシステムは伝統的システムとも呼ばれ、戦前と戦後1950年代から1960年代初頭までは、メーカーがフランチャイズ契約や公正取引法の適用によって強化し、卸売業者や小売業者をコントロールし、比較的安定していた。ところが、1960年代に小売部門に百貨店や総合小売業(GMS)の巨大小売業の家電の小売部門への参入、小売部門の中から大型小売チェーンの登場し、これらの巨大小売業は日本からの輸入による直接取引で、安い価格でメーカーのNB製品に対抗した。このことはメーカー主導型の流通システムを不安定にし、価格の急落の一つの要因となった。このような事態に直面したメーカーは卸売業者を系列化したり、フランチャイズ契約の締結、公正取引法の適用などによって流通の再編成を強化し、価格の安定を企てようとした。 第2の課題である松下電器、日立、シャープの輸出マーケティングについては、予想以上に資料が多く、その資料の収集と聞き取り調査にとどまった。早期に分析し論文にとりまとめる予定である。
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