昨年度は県下商業の被災と再生に関する資料の収集を行うと共に、震災発生前までの兵庫の商業の構造変化の実態を、主として「商業統計表」(通産省)によって把握することに努めた(今回の『報告書』の第1章に掲載)。また、今回の研究に関係した予備調査的内容の研究報告を行い執筆を分担した(小西一彦・上瀬昭司「第7章 震災にいよる商業の被災と再生」『県立4大学震災復興特別研究報告書』平成9年3月)。 今年度は、震災による商業の被災と再生の現実をより全県的に解明するとともにそこからの再生の望ましいあり方を探る目的で、県内の全商店街(743)と全小売市場(248)の団体代表者を対象とする実態調査を行った(平成9年3月実施、質問項目83問、回答欄は約500項目。有効回答票は247、有効回答率は25%)。結果の集計と分析はExcelとSPSSにて行った。商店街・小売市場の震災被害の実態と、そこからの再生(復旧・復興)の現状、それを困難にしている要因などを明らかにすることができた。今後の再生を考える上では、震災による被害の問題だけでなく、最近の大きな商業構造の変化の問題や中小商業の組織化・合理化の遅れの問題、経営者の高齢化や後継者問題、空き店舗問題なども重要な問題としてあり、それら問題への的確な対応が求められていることが分かった。 『報告書』の作成に先立ち、本学経済研究所から、これら結果を集計した図表のみを分冊にて刊行した(小西一彦・上瀬昭司『兵庫県内の商店街・小売市場の現状(1)(2)』神戸商科大学経済研究所、平成9年10月)。なお、平成10年2月14日、県立4大学の主催による「第3回県立4大学震災復興特別研究発表会」にもポスターセッションにて参加した。『報告書』は5章編成にて取りまとめた。第1章は、兵庫の商業の震災による被害の実態、第2章は、震災以前の兵庫の商業の構造変動、第3章は、兵庫の商店街・小売市場の現状、第4章は、兵庫の消費者の購買行動、第5章は、今後の兵庫の商業の再生(復旧と復興)のあり方、以上である。
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