今年度の研究計画は、1.交通利用者および交通事業体の行動を部分均衡で分析し、市場の特性によって介入が必要か、あるいは規制緩和が望ましいかを理論的に検討すること、および 2.交通と他の経済活動の一般均衡デモルを考え、国際経済構造の変化が交通市場に与える影響を分析し、介入が必要か、そうでないかを分析すること、を中心にしていた。得られた成果は次のようにまとめられる。 1.部分均衡分析 (1)ロードプライシング:最近な混雑税の徴収をめざすなら、利用者それぞれの道路利用価格を反映した完全な差別料金をとるべきである。香港などで実験されている、電子式料金徴収システムはそれに近い。技術的あるいは徴税コスト的にそれができない場合には、単一料金制を採用せざるを得ない。その場合、道路交通だけではなく、鉄道のような他の交通モードとの振り替えも考えた政策が必要になり、政府の役割は依然として残るであろう。 (2)交通投資:政府が設備投資をする場合、財政目標としての収益率の資本ストックに対する弾力性と市場利子率の大きさに応じて、投資が過大にも過少になる。また、投資を民間にませる場合には、投資のタイミングに注意すべきである。 (3)航空輸送:アメリカの「航空輸送緩和法」以降、航空会社間の自由協定の影響で、運賃は下落すると思われるが、理論的にもその傾向が確認できる。 2.一般均衡分析 (1)交通投資の評価デモル:財の生産・消費・輸送・貿易および交通投資を含んだ一般均衡分析では、どの評価基準で交通投資の社会的影響を測るかが重要になってくる。 (2)製造業および輸送企業の戦略的依存関係:モデルの構築にあたって、寡占下の企業行動を大幅にとりきれることが重要になってきている。輸送企業の同業他社との競争の形態が荷主としての製造業の最適行動に考える影響を分析しなければならない。
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