本研究は最近の国際経済の自由化が進む中で交通市場の変化を体系的に捉え、政府による市場への介入政策の必要性あるいはその是非を問うことを目的に遂行された。研究の成果は大きく分けて3つに分けて考えることができる。 1.地域経済統合の進展が新たな交通需要を生み出す可能性を持っていることがわかった。その理由は規模の経済が働く産業の育成には出来るだけ広い市場を確保することが必要で、そのための条件整備として地域経済統合が用いられることがはっきりしてきたからである。 2.交通の部分均衡分析のサ-ヴェイを通じて、国際経済の自由化が進展しているにもかかわらず、政府の役割が低下しているという議論より、環境や公益事業投資のタイミングといった新しい問題に対処し、社会的厚生を増大させるという観点からすると、むしろ政府が果たす役割は増えているとも言える論点の方が多いことが分かった。但し、航空運輸の場合には従来の政府規制から離れて、自由化した方が運賃が下がり、消費者にとって望ましいという議論が優勢である。 3.交通とその他の経済部門を同時に含む一般均衡分析では、従来の完全競争モデルではなく、寡占企業の戦略的相互依存性の分析が不可欠で、特に輸送産業自体の寡占体制が荷主としての製造業者の行動を規定する可能性が高いことが理論的に確かめられた。 今後の展開としては特にネットワーク外部性を重要視した企業活動が活発化すると思われるが、そうした異なる企業あるいは産業間の補完性と製品・サービスの互換性の増大に政府がどう対処していくかの分析が必要になってくるだろう。
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