企業・組織の国際比較経済分析に関する研究は以下のように行った。 第1は、ドイツ・日本・米国企業における企業統治・組織間取引関係の側面に焦点をおいて比較分析を行った。分析はゲーム理論などにもとづいて対象の実態を説明し、統計データを用いて各国企業間の差異を明らかにした。他国と比較した、日本企業の特徴は以下のようにしてまとめられる。企業統治は監視と報償制度に関しては、経営者と労働者間の結託が株主利益を上回る可能性を持っている。また、資本市場との相互作用に関しては、株式相互持ち合いによる長期相互自己拘束および株式市場の弱い監視が株主統治力を不完全にしか働かないようにしている点が指摘できる。日本企業間の取引関係では取引関係者の統制は長期にわたる信頼を基礎に取引関係特定資産への投資がなされ、生産効率化を促進するようになされている。 第2は金融市場での取引関係の実証分析を行った。日本の金融取引関係について、米国でのそれと比較しながら実証分析をまとめた。メインバンク制の生成と変化を指摘し、今後の金融取引関係の方向を示唆している。 第3は生産物流通市場での取引関係の理論および実証分析を行った。日本の流通取引慣行の生成過程を自動産業の歴史的資料をもとに分析した。製造業者を流通業者間では、取引関係特定資産投資と並行した信頼・取引規範形成のよって、特約店制などの取引慣行が長期間にわたって、自律的暗黙契約のもとに維持されていることが指摘できる。
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