本研究課題「組織風土の日韓比較に関する実証的研究」は、韓国における企業・自治体の具体的な意思決定事例を捉え、そのプロセスを具体的に把握し、日本の稟議的意思決定、日本の組織風土、特に諸個人の職務権限、職務遂行の実態の異同を考察することを通じて、韓国の経営組織風土の近代化の過程を日本との比較において考察するというものである。 研究初年度にあたる平成8年度は、韓国の自治体における意思決定の具体的な事例を把握すべく、江原道江陵市役所の水産課係長(当時)咸栄来氏に対し、インタヴィユ-調査を行った。事例は、江陵市郊外の見召洞地区に、植民地支配時代からの念頭であった見召港の建設である。現在5割方建設が進行しているが、インタヴィユ-によって咸栄来氏の発想から、市長、江原道知事、政府の認可、着工にいたるプロセスを把握することができた。あわせて、その間の「稟議書」に類似した多くの書類、並びに図面等の資料を得た。目下、インタヴィユ-・テープの掘り起こし、翻訳作業を行っている段階である。インタヴィユ-時の印象にすぎないが、韓国の組織では企画、立案が集団の協力でと言うよりはむしろ、個人の力、人脈によって推進されているように思われる。詳しい分析が急がれる所である。
|