上記研究の2年目における成果は、次に示す4点である。第1点は、1昨年韓国江原道江陵市役所を訪れ、主として市役所の水産課係長K氏とのインタビューを通じて得た「水産港開発計画」の推進にかかわる意思決定の過程についての録音テープのすべてを掘り起し翻訳したことであり、第2点は、その過程でK氏の好意で取得し得た「水産港開発計画」に関わるほとんどすべての、かなりの量の起案書、付随文書の翻訳を完了したことである。第3点は、上記研究との関わりを意識しつつ、本学社会科学研究所の研究費による3年にわたる協同研究の成果『アジア日系企業における異文化コミュニケーション』を完成させ、第1章、第3章「韓国日系企業における異文化コミュニケーション」、結章、等々を分担執筆し、共同編集したことである。さらに第4点も、上記課題を意識しつつ、石田和夫他編著『企業労働の日英比較』において第5章「QCサークル活動の日・英・韓比較」を分担執筆したことである。特に第1点、第2点の資料の分析は、韓国における組織風土や意思決定に関する文献の渉猟・読了して後の今後の課題であるが、K氏とのインタビューから得られた韓国の組織風土、意思決定に関する印象は、(1)日本のように集団的にではなく、上司の承認・保護・援助の下に個人的に仕事を進める傾向があること、したがって(2)特定の上司との結合の下に、個人的に意思決定がなされ、実行される傾向があること、等々である。精緻な分析を待って、全容を明らかにしたい。
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