80年代初めから半ばにかけての世界同時不況のなかで、欧米の巨大化学企業は設備廃棄などを含むリストラに着手。他方で、特に欧州企業は米国市場への直接投資の拡大を通じてグローバル化を推進。ICI社(英)のように、経営組織を事業のグローバル化にあわせ、再編する企業もあった。 しかし、80年代後半の世界的な景気回復・経済成長のなかで、欧米の化学企業は設備能力の拡大や、積極的なM&Aを通じて多角化を進めた。80年代をリストラの第一ラウンドとすれば、90年代に入っての不況下で、さらに激しいリストラの第二ラウンドが開始された。 90年代のそれの特徴は(1)コスト削減、(2)不採算部門の見直し、売却、(3)中核(コア)事業の絞り込み、(4)株式市場を重視した経営への転換、(5)東アジア市場への直接投資の拡大、である。この点では米国の化学企業の動きが速く、欧州ではICIがいち早く着手。遅れてドイツ、フランスの企業も着手。これらのリストラの成果は、その後の景気回復のなかで収益の急回復につながっている。日本企業との大きな違いである。 リストラの第二ラウンドの背景には、90年代の競争環境の激化に伴う世界的なコスト競争力、製品差別化能力、グローバルな事業展開能力が問われる時代に入ったことがある。企業が市場で勝ち抜く手段は、基本的にはコスト競争力か、製品差別化能力しかなく、またグローバル化した時代においては、それらの強みを活かしてのグローバルな事業展開能力が競争優位の構造となる。 グローバル化の進展につれ、国際的な投資家(機関投資家)の監視にさらされる度合いが高まる。特に、最近のドイツ化学企業の経営に株主の利益という視点が導入されてきたのは示唆的。以上の特徴は、今後の世界の化学企業の経営の基調となるだろう。 以上の論旨で、具体的なケースをあげながら、今後成果をまとめる予定である
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