電力料金規制理論の発展に対し、我が国における公益事業の現実的な内部経営効率の向上や規制スキームに適応した適切な電力原価管理の手法に関する標準化されたモデルは今後の検討課題となっている。これは電力料金規制理論が欧米の公益事業をモデルにミクロ経済学的見地から発達してきたこと、国内の個別電力企業についての経営・原価分析が中心で現実的には原価管理目的を二義的に位置づけていたことと無縁ではない。 本研究においては、電力事業における電力原価管理手法の発達が電力料金水準にどのような影響を及ぼすかをモデルを構築して企業経営の領域から考察し、その結果を受けて電力料金規制および料金水準が日本の産業構造にどのような影響を及ぼすかについての理論的・実証的研究を行った。これにより、我が国における電力事業の料金規制と原価管理の実態を基礎に、将来の電力事業における原価管理手法の適用と料金規制理論との整合性を示し、実施可能かつ有効な料金政策についての提言とその検討を試みた。
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