平成8年度の研究は、以下のように実施し、新たな知見といくつかの研究成果が得られた。 1、中国の企業会計制度の文献や資料の収集活動を継続し、強化してきた。東京や大阪の証券取引所や証券会社、大学、研究機関等を訪問調査してきた。その結果、中国の証券市場や株式会社制度、企業の上場問題などの資料、中国の経済改革と開放政策によってこれまで公布されてきた企業会計に関わる各種の法律や条例などをほぼ収集することができた。 2、平成8年度から外国旅費が認められたことを活用し、8月19日より9日間中国現地を訪問し、中国の国有企業の改革や企業会計に携わってきた様々な関係者と意見交換をし、筆者の研究内容についてレビューを受けた。日本でもよく知られた国有大企業である首都鉄鋼公司の管理部門を担当してきた高級経済師から、企業改革と経営請負制、会計制度の現状について議論し、また中国のベンチャー企業として著名な連想企業集団や北大方正集団においても同様な意見交換をした。さらに中国社会科学院、北京商学院、人民大学とその付属の会計士事務所などを訪問し、筆者の研究論文について意見を求めた。この結果、北京の国有大企業とベンチャー企業の会計制度と財務の現状、会計制度改革の動向など筆者の研究に有益な示唆を得た。 3、平成8年度に購入したパソコンによってインターネットの利用が可能となり、資料や情報の収集能力が飛躍的に高まった。わが国の研究機関だけでなく、中国研究を進めている欧米の大学や研究機関からも情報収集できることは画期的なことであった。これは当初予定していなかったことであるが、今後はきわめて重要な研究手段となることは確実である。
|