平成8年から3年間にわたる本研究は、基本的には次のような3つの目的をもって実施し、新たな知見といくつかの研究成果が得られた。それぞれに即して報告していきたい。 1、 中国の新しい会計法規と各業種の会計制度、とくに「具体会計準則」草案の内容を整理すること。これについては中国の制度会計が会計法、会計準則、各種の業種別会計規則という3つの階層をもって成立していることを明らかにした。また中国の具体会計準則の制定は、予想より遅れていたのであるが、平成10年度にやっと動き出した(一気に6つの基準が制度化された)事情やその背景などを中国現地を訪問し、研究者と意見交換するなかで理解できた。 2、 日本や欧米諸国、国際会計基準との比較検討を通してその特徴と問題点を明らかにすること。これらについても広く文献を渉猟し、検討してきたが、基本的には中国の具体会計準則の内容は国際会計基準などに非常に近いものとして作り上げられてきていることがわかった。ただ社会主義をいまなお国是とする中国には資本会計などで独特の特徴があり、これらを発展させるために労働者持分会計や付加価値会計を提唱する研究者も現れてきている。これについては筆者の研究論文を参照されたい。 3、 国有企業における会計部門や中国の会計士事務所の業務を調査し、会計改革がどのように具体的に進展しているかを考察すること。これらについても中国の北京や上海で論文のレビューを受ける機会を利用して訪問調査をしてきたが、会計士事務所の所員数と業務量の増大、大学の会計学部の発展に企業会計制度の改革の息吹が感じられた。税理士制度も開始された。なお今後の課題としては、中国では昨年より政府会計や非営利事業会計などが大きく変わり、企業会計だけでなく、こうした公会計の研究も中国の会計では重要である。
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