環境諸規制の強化や環境保全に対する社会的関心の高まりを背景に、日本企業は、これまで地域社会が負担してきた環境コストの内部化を迫られているが、これをうけて、当該コストの効果的な管理に資する情報の提供を管理会計システムに期待する論議もにわかにかしましくなってきた。本研究では、この役割期待に応える管理会計システムの論点を確認しつつ、とくにライフサイクル・コスティング(LCC)をはじめとする既往の手続きの有効性について、文献研究ならびにわが国企業数社に対する訪問調査を中心とした考察を行った。 まず、文献研究から得た知見を総合するなら、既往の文献の多くは、すでに運用実績をもつライフサイクル・アセスメント(LCA)による環境コスト算定の精緻化が議論の中心となっている。LCAは、製品や生産プロセスが環境に及ぼす負荷の大きさをライフサイクル全体にわたって定量的に測定・評価する手法であるが、現在までのところ、LCAと前述のLCCとの明確な接点は見あたらない。ただし、本研究を通じて、ドイツの環境原価計算や米国のフルコスト・アカウンティングが、両者の統合を具現化するツールとなりうるとの確信をえた。 つづいて、訪問調査を通じて、わが国先進的企業が現在、管理会計にいかなる貢献を期待しているか、また既往のシステムにはいかなる問題点が内在しているかが、ある程度明らかとなったと考えるが、今後ISO14001シリーズ等の認証取得等が進み、企業の環境対策がよりシステマティックな展開を求められるようになってくると、さらなる貢献と同時に、管理会計自身大きな変革を求められるようになると考える。次年度においては、この変革のあり方を見極めることを中心課題と位置づけ、研究を続行する予定である。
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