研究概要 |
頂点作用素代数はモンスター有限単純群とモジュラー関数との間の神秘的な関係を説明するムーンシャイン予想の解として構成されたムーンシャイン頂点作用素代数が出発点であるが,以後の研究により、物理における弦理論などで注目されている2次元共形場理論の厳密な数学的定義であることが分かっている。この頂点作用素代数は通常の代数とは異なり,無限個の演算を持つものであり,色々な代数を内部に含む複雑な構造を持っている。さらに、無限個の積を与える頂点作用素の成分全体は非常に大きな代数(カイラル代数)を構成している。 本研究は、このカイラル代数の立場から頂点作用素代数を考察した。特に、研究実施計画に従って、宮本が2元線形コードから構成した頂点作用素代数(コード頂点作用素代数)について、そのカイラル代数としての表現を考察し、新しい概念である誘導表現を導入した。この誘導表現は一般の誘導表現の拡張であるが、頂点作用素代数においては、一般には役に立つような定義が難しく、コード頂点作用素代数のように、うまく行く例は少ない。コード頂点作用素代数は共形場理論として良く研究されているイジング模型のテンソル積として理解できるため、扱いやすく、その上、共形場理論として複雑であるラティス型の頂点作用素代数の多くをコード頂点作用素代数から構成できるなどの利点がある事などが本研究によって分かった。この様なラティス型の頂点作用素代数を与えるコードの研究は分担者の木村が行い。誘導表現を与える群の表現の研究は飯寄が行った。また、この研究の進展にはミシガン大学教授のグライス氏からの助言、および、千葉大の北詰氏、大阪大学の永友氏などとの研究連絡が大きな役割を果たした。
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