研究概要 |
この研究では、Chern-Lashofの不等式が他の空間形でも成り立つのではないかという、Willmore-Saleemi予想について部分的解答を与えた。∫:M^n→S^m(1),H^m(-1)をn次元コンパクト多様体のisometric immersion、ν(∫)^1をunit normal bundle、Aを第2基本形式とする。∫の全曲率を次のように定義する。γ(∫)=1/(ω_<m-1>)∫_<e∈ν(∫)^1>|detA_e|dσ. 定理1 ∫:M^n→S^m(1)をisometric immersionとする。いま∫(M)がS^m(1)の半径Rのgeodesic ballに含まれているとする(R<π/2)。すると γ(∫)【greater than or equal】cos^<m-1>R・Σ^^n__<i=0>b_i(M). 定理2 ∫:M^n→H^m(-1)をisometric immersionとする。いま∫(M)がH^m(-1)の半径Rのgeodesic ballに含まれているとする。すると γ(∫)>(1+n・sinh^2R)^<-1/2>・(cosh R)^<-m+n+1>・Σ^^n__<i=0>b_i(M). 定理1、2の証明の系として、ユークリッド空間で成り立つ種々の結果を球面と双曲空間に拡張することができた。たとえば、空間曲線についてのFenchelの定理や、knotの全曲率についてのFary-Milnorの結果が拡張できた。これは球面については今までに無い新しい結果である。さらにR^3の中のknotted torusの全曲率に関するLangevin-Rosenbergの結果についても、球面、双曲空間で対応した結果が証明できた。 今後の研究方向について述べる。Willmore-Saleemi予想の証明に向けて、定理2の不等式を精密化したい。そこでまず超曲面を対象として、Gauss-Kronecker曲率を小さくする方向に曲面を変形することを考える。これにはHamiltonやHuiskenの手法が使える。また、定曲率でない負曲率空間で、Chern-Lashof型の不等式が成り立つかどうかを調べる。これはまだ誰も手をつけていない問題である。
|