研究課題/領域番号 |
08640165
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
南 就将 筑波大学, 数学系, 助教授 (10183964)
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研究分担者 |
三河 寛 筑波大学, 数学系, 助手 (10219602)
横井 勝弥 筑波大学, 数学系, 助手 (90240184)
石川 保志 筑波大学, 数学系, 助手 (70202976)
若林 誠一郎 筑波大学, 数学系, 教授 (10015894)
梶谷 邦彦 筑波大学, 数学系, 教授 (00026262)
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キーワード | エネルギー準位統計 / 固有値分布 / 量子カオス / ポアソン分布 / 格子点の問題 / 幾何学的確率論 |
研究概要 |
自由度dの完全可積分なハミルトン力学系として記述される物理系の量子エネルギー準位(スペクトル)は、いわゆるEBK-量子化により(近似的に)与えられる。即ちこの力学系を、作用-角変数により表示した上で、作用変数I_1,...,I_dがプランク定数の整数倍の値のみを取ると仮定し(量子化条件)、それらをハミルトン関数Hに代入したときに、Hの取る値の全体が系のエネルギー準位になる。(このことは数学的に完全に正当化されている訳ではないが、本研究ではしばしこれを前提とする。)物理学者のBerryとTaborは、EBK-量子化により与えられるエネルギー準位の配列状況を調べることが、作用変数Iの空間において等エネルギー面H=Eが囲む領域内の格子点の個数を数える問題に帰することに注意し、それに基づいてエネルギー準位の配列の統計的性質が(適当なスケーリングの後に)ポアソン過程に近いことを予想した。後に数学者のSinaiとMajorは系の自由度が2の場合にこれと密接に関連する格子点の問題を定式化し、解いた。即ち彼らはランダムパラメータに依存し、一定の面積を持つ平面領域に含まれる格子点の個数を考え、その確率変数としての分布が、領域を細長くした極限においてポアソン分布あるいはその重ね合わせに近づくことを示した。彼らの結果はエネルギー準位統計との関連においても、また数学の定理それ自体としても重要なものだが、その証明は極めて複雑で、未消化の感を免れないものである。本研究の代表者(南)は数年前からその証明の簡素化と定理の成立条件の緩和を試み、多少の成果を得ていたが、本年度はSinai-Majorの定理とその背景にあるBerry-Taborの理論との関係を改めて分析し直し、Sinai-Majorの定理にわずかながら異なる定式化を与えることで、定理の証明がかなり見通しよくなることを発見した。しかしながら定理の成立条件を本質的に緩和するには解析数論に関わると思われる微妙な問題を克服する必要があり、今後の課題として残った。
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