1991年研究代表者は佐藤幹夫-河合隆裕-柏原正樹による超局所解析を、調和函数を用いて解析的に定式化し直し、佐藤らのように多変数複素解析の深い結果を用いることなく、佐藤超函数、マイクロ函数及び佐藤超函数のマイクロ函数への分解が定義できることを示した。しかしながら、マイクロ函数に作用する最も自然な作用素族である擬微分作用素をこの見地て定義することはできていなかった。 今回の研究の主要な成果は、これが一般Toeplitz作用素として自然に定義できることを示したことである。すなわち、研究代表者の立場ではユークリッド空間R^nの余接球バンドルS^*R^nはR^nの単位球Dを底とする柱状領域DR^n=R^n+iDの境界R^n+iS^nと同一視される。S^*R^nの領域Σ上のマイクロ函数はΣを境界の一部とするDR^nの領域Θ上の整型函数U(z)のΘUΣ上の整型函数全体を法とする剰余類[U(z)]として定義される。このとき、Szego作用素SがΣ上の実超函数をΘ上の整型函数にうつす作用素として本質的に唯一つ定まる。そして、0階の擬微分作用素はマイクロ函数の代表U(z)のΣ上の境界値に主シンボルを掛け、更にSzego作用素Sを施して得られるToeplitz作用素と-1階の作用素の差を除いて同じである。これを逆に定義に用いる。Toeplitz作用素は特殊な核をもつ積分作用素として表すことができる。この核を一般Toeplitz核とよぶ自然な族にまで拡げると一般の擬微分作用素の定義が得られる。 残念ながら、これを用いて擬微分作用素あるいは超局所解析について新しい結果を導くことまではできていない。
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