研究概要 |
平成8年度科研費補助金を得て成された代表者の研究実績は、出版された論文が一遍、出版予定の論文が一遍、投稿中の論文が一遍である。その内容は次の通りである。 1.研究課題「実解析的補間関数とその応用」について次の結果を得た。高次元ユークリッド空間の点xと時間tによって決る曲面z=F(t,x)について、tによる偏導関数の符号がxに無関係であるときz=F(t,x)を実解析波関数(曲面)と呼ぶ。それは平面波と同じような形をしている事に由来する。任意の関数f_1(x),…,f_n(x)が与えられたとき、t_1,…,t_nを等間隔にとってF(t_i,x)=F_i(x)となるような実解析波関数z=F(t,x)が存在する事を示した。これは一遍の論文にまとめて投稿中である。 2.上記の結果を行列あるいは作用素の可換性に応用した。すなわち、自己共役である行列あるいは作用素全体は実バナッハ空間を作る。その中に多くの実解析波関数があり、作用素が可換であるとは同じ実解析波関数の値として現れる事である。換言すれば、いくつかの作用素が可換であるための必要十分条件は、一つの実解析波関数(曲面)があって、作用素がその曲面によって結ばれる事である。この結果をまとめた論文は、平成8年度に出版された。 3.研究課題から少し離れた研究であるが、一般のバナッハ環の元の数域について研究した。特に解析的関数による元の変換によって、数域がどのように変化するかという、いわゆる、写像定理について研究した。この結果については平成8年8月に札幌で開かれた国際会議で発表し、雑誌Archievder Math.に受理された。 4.研究課題から少し離れた研究として、Korovkinの定理についても研究成果がでた。これは近似理論の一分野として発展してきたが、作用素環の理論を使う事によって、定理がすっきりしたものになっている。私はそれを作用素不等式の考え方を使って更に拡張した。
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