研究課題
1.線形双曲型方程式の初期値問題の特異摂動の解の漸近展開を分散型の場合に行った。正の微小パラメータが零になるとき、方程式は低階の双曲型方程式に縮退する。元の双曲型方程式の特性根と縮退した方程式の特性根の分離条件により、特異摂動の漸近展開の修正項は振動型の関数を用いる必要がある。その修正項を時間に関して大域的に構成するためにマスロフの正準作用素を用いた。このような応用例は新しいと思われる。この研究により(初期値)境界値問題の特異摂動の研究の準備ができたといえる。並の伝播の問題へのマスロフの複素位相の方法の応用の可能性が考えられる。フィリピン大学のパレ-デス助教授とマスロフ理論のセミナーを行い、漸近解析的方法の非線形方程式への応用を考察した。これはまだ、研究の途中である。2.複素パラメータをもつ複素変数の3階の線形常微分方程式のストークス現象の解析の研究。解の積分表示とその鞍部点法および多価関数のラプラス変換を用いて再生関数(resurgent function)の視点から、2階の微分方程式にはない新しいストークス現象を最急降下線の図示によって理解する方法を示した。また同じ問題をM.V.BerryとC.J.Howlsによる超漸近解析の考えを用いて研究した。3.変形ベッセル関数の複素パラメータの漸近挙動の超漸近解析。積分表示はガンマ関数のときと同じように無限個の鞍点が現れるが、さらに複雑で、微分方程式の独立変数をパラメータにもっていて、その変化に応じて鞍点の間の「隣接性(adjacency)」が変化することを数値的に(コンピュータの画像処理によって)示した。これは、Boyd氏との共同研究として進行中である。
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