研究概要 |
リーマン多様体の領域上で拡散方程式の斜微分問題の解および対応する拡散過程の境界挙動を調べるために必須となる,領域の法線方向への摂動に関する安定性について考察した. 係数の滑らかさがヘルダー連続性程度のときは,基本解についての時間微分や空間2階微分の上からの評価は領域の境界近くで爆発することが分かっているので,基本解の空間1階微分までの安定性を示すことが応用上必要である.ここではそれを基本解の構成にまで立ち戻り新しい構成法でその安定性を示した. 次に,領域摂動に関する,対応する拡散過程の安定性,特に拡散過程の境界挙動を調べるための主要な道具である境界上の局所時間の弱収束性を示した.また,基本解を用いた解の積分表現と拡散過程を用いた確率論的な表現を組み合わせて,局所時間にRevuzの意味で対応しているsmooth measureの具体的な表現を得た.これより,そのsmooth measureの(拡散作用素や境界作用素の係数および領域等の)データ依存性についても完全な情報を得ることができた.特に斜反射と正反射の違いがsmooth measureにどのように反映するかを具体的に与えることができた.またこれらの結果を得る上で基本となる多様体のsmoothingについての従来の結果の拡張について考察しそれが可能であることを示した. これらについては,TGRC-KOSEF'96 International Workshop on Mathematicsにおいての招待講演で発表した. 更に関連して,カルノ-・カラテオドリメトッリク,エルミート・ラゲ-ル展開に対するハ-ディの不等式および複素射影空間におけるコンパクトな極小CR-部分多様体についての結果を得て論文として公表または公表予定である.
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