子供の知能指数と体格が見かけ上高い相関を示すことは、統計学でよく知られている。しかしながら、そのような結果を与える原因は、年齢が知能指数と体格にそれぞれ影響を与えているからである。そのことは、知能指数と体格から年齢による影響を除き、偏相関を求めれば低い相関を得ることからわかる。時系列でも真の原因は別にあり、同じような現象が生じていることは、十分予想される。 3変量の弱定常時系列を考えよう。この時最初の2つの弱定常時系列から、3番目の弱定常時系列の影響を除いた時系列を、KM_2O-ランジュバン方程式の理論から、具体的に求めることができる。主たる方法は射影であり、複雑ではあるが、時系列を求めるアルゴリズムを構成できる。このアルゴリズムを適用して求めた2つの時系列について、因果解析を試みることが、現実にそくした重要な問題であると考える。求められた時系列は、弱定常性を持たない。しかしながら、岡部靖憲東大教授によって提案された、因果分布のヒストグラムを作成する方法によって、因果解析を試みることができる。因果の定義として、局所因果の定義を与えれば、その数学的構造も弱定常性を持つ時の拡張として求めることができる。これは、非線形の場合でも変わらない。データ解析では、最初に弱定常性の検定を行うことが肝要である。その後の具体的な手順については、1997年1月に札幌で開かれた、"複数系の構成論および計算論のための実験数学"において、いわゆるマクロ経済時系列を例にとりながら報告している。
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