Okabe-Nakanoが提案した、弱定常性を検定するTest(S)は、決められた手順によって取り出された統計値が、直交性をもった、平均0、分散1、のホワイトノイズの実現値と見なせるかどうかを判定する基準である。100個から400個程度のデータを想定して策定されている。検定法法には、II型あるいはIII型とよばれる、非線形変換から得られるデータにたいして、実験結果に問題があったので、その修正を試みた。例えば、分散1を検定する統計量には、4次のモーメントがあり、これが、統計量の収束を悪くしていると考え、別の統計量を導入した。また、平均Oの検定には、t検定を用いた。直交性の検定は、Test(S)での検定を少し簡素化した。その結果、おおむね良好と考えられる実験結果を得ることができた。これらは、“On a revised test of Test(S) of time series“にまとめることができた。時系列間の因果解析については、因果の定義をどのように与えるかが問題であるが、Nakano(1995)が提案した、Local causalityの概念を非線形まで拡張して与えることができた。時系列間の因果値という概念を与えたことで、実証研究に貢献できるのではないかと考えている。この結果は"On a causal function between time series“にまとめてある。二つの論文では経済の時系列にふれていないが、GDPあるいはマネーサプライなどの多くの経済データを分析した。東大で開催された複雑系のシンポジウム(1998年9月)。“複雑系現象と実証分析"では、経済時系列の分析結果を報告している。2つの論文には含めなかったが、3変量が互いに影響しあうときの因果解析法にもとりくんでおり、ある程度の成果を得ている。その結果は、同じく東大での複雑系のシンポジウムで紹介している。
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