研究概要 |
本研究の目的はこれまで部分的に得られていた,1次元拡散過程や出生死滅過程の到達時間の到達点を境界に近づけたときの極限分布について統一的な結果を得ることであった.我々は上記の二つの確率過程を含む1次元一般化拡散過程に対して極限分布を考察し,出発点が反射壁の場合には条件と結論が非常にわかりやすい命題として統一的に述べられることを示した.一般の場合には条件はやや強くなりいくつかの場合に場合分けした形で命題を述べなければならないがこれまで得られていた結果をすべて含み,しかもより深く,統一された形の結果を得る事が出来た.また,そのやや強い仮定の下では到達点を時間パラメータと思って確率過程とみた到達時間過程が有限次元分布の意味で独立増分自己相似過程に収束することがわかった.独立増分自己相似過程については佐藤健一氏が詳しい研究をしているが,我々が得た極限過程は独立増分自己相似過程の興味ある例になっていると思われる.極限過程の分布のラプラス変換は変形ベッセル関数を多少変形したものと密接に結びついている.得られた結果は"Limit theorems for hitting times of 1-dimensional generalized diffusions"という題の論文としてまとめられ,投稿中である.また,今回の研究およびこれまでの1次元一般化拡散過程の到達時間分布に関する研究の総合報告を台北で催された"Symposium on Analysis and Probability"と題する国際研究集会で行った.なお,正規分布に収束するための十分条件はもう少し深める余地があり,今後の課題である.
|