脳認知系における脳内ダイナミクスと符号化の機構について、近来のニューロ・イメージングや、多細胞同時記録からのJPSTHなど、従来の符号化理論では捉えきれないデータや、情報統合問題などの理論的困難を統合的に解決する可能性として、相関符号化理論に基づく符号化機構についての新しい仮説-動的セル・アセンブリー仮説を提唱し、その生理学的・数理的な検証の必要性を提起した。本研究は、その主張を理論的、および生理学的に検証するための作業である。 本年度では、情報統合に関する理論的試論として、“束ね"の相関シナリオ[ ]を提示した。また動的セル・アセンブリー仮説に基づく“束ね"の相関シナリオによる動的リンキングの原理的な実現可能性を示すために、抽象コインシデンス・ディテクター系という枠組みの中で、コンピュータ・モデルを構成した。[2]視覚サブ・モダリティー間の“束ね"の問題を具体的に“解く"概念例として、複数属性をもつ2つの視覚物体(色と長さの異なるバ-)間の動的バインディングをおこなうシステムを構成した。この系は、入力刺激の位置に関する完全な不変性を保ち、かつ脳の異なった領域で処理される視覚物体の複数の属性を統合する動的な機構を内在する。(閾値下での相互作用をもつ)複数(2つ)の相関ダイナミクスが内部的に生成され、入力文脈(例えば、バ-の色と長さの組合わせ)の変化に伴って相関セル・グループの動的な組替えが実現する。このとき、統合した情報を<表現>する細胞グループ内では、互いに相関をもつ。他方、異なる細胞グループ間の細胞には相関が生じない。
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