太陽系に近い星形成領域であるカシオペヤ座分子雲複合体内の暗黒星雲L1355、L1357、L1358を含む領域を13COとC18O(J=1-0)輝線でマッピングした。また、COガスの励起温度を求めるための12CO(J=1-0)輝線の観測をこれらの分子雲内の18点で行った。観測装置はいずれも名古屋大学理学部物理学教室の4m短ミリ波望遠鏡と、4K冷却のSISミキサ-受信機、バックエンドはバンド幅40MHzで1024チャネルの音響光学型分光計である。観測は周波数スィッチングで行い、グリッド間隔は2′である。 13CO輝線の観測から、これらの分子雲は視線速度が約-15、-11、-3kms-1の3成分から成ることが分かった。一方、C180輝線は-15kms-1付近の成分だけが検出された。これらの雲の距離を、中・高速のものは600pc(近くにある視線速度約-15kms-1のL1340で得られた距離と同じとして)、低速のものは300pcとすると、その総質量は約2×103太陽質量となり、カシオペヤ座分子雲複合体中で有数の大質量を持つことが明らかになった。この領域には原始星である可能性が大きい低温のIRAS点源が6個あり、いずれも13CO雲のコアに、そのうち2個はC18O雲のコアに付随している。この事実はこれらの分子雲で星が形成されていることを示す。また、ディジタル化したパロマ-写真星図に基づくスターカウントから求めた星間減光の分布は13CO輝線強度の分布とよく一致し、この分子雲でガスとダストが混在していることが明らかになった。 今年度は4m望遠鏡の整備・立ち上げが遅れたために十分な広さの領域について分子線マッピングを行うに至らなかったが、一方では、コンピューター上でスターカウントができるようになった。この方法は暗黒星雲の分布、物理量の導出、など暗黒星雲の今後の研究に威力を発揮すると期待される。
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