研究概要 |
1.移流優勢円盤のモデルづくり: 一温度系で,かつ輻射冷却を無視した近似の基で,遷音速点を通過する大局的な移流優勢円盤を米国ハーバード大学のナラヤン教授と共同してつくった.移流優勢降着円盤は銀河中心核やX線星の高エネルギー状態を説明するモデルとして最近注目されているが、遷音速点を通過する大局的なモデルはまだできていなかった. 引き続き,一温度系の近似を外し,二温度系の移流優勢円盤をつくることを行った.数値計算は大学院生が行った.移流優勢円盤は高温,低密度のため,熱が直接発生するイオン系と輻射として熱を失う電子系との間に温度の分離が起こる.このような二温度系の遷音点を通る大局的なモデルを始めてつくった.なお,電子系からの,輻射冷却としてシンクロトロン冷却は重要であるが,このモデルではまだそれを考慮に入れるところまでは行かなかった.このモデルによって、大局的な二温度系円盤の構造に関するいくつかの特徴が分かり,また,近似的モデルのつくり方についてもヒントが得られた. 2.移流優勢円盤の局所的熱不安定性 降着円盤の熱不安定性は幾何学的に薄い円盤に対しては,詳しく研究されているが,移流優勢円盤はかなり高温の円盤であり、従って,幾何学的に薄いとする近似が適当でなくなる.また,これと関連しているが,圧力による力が系の動径方向の構造を決める上に無視できなくなっている.これらのため,局所的熱不安定性の条件は従来の幾何学的に薄い系に対して求められていたものと大きく変わる.これらのことを考慮して,移流優勢円盤の局所的熱不安定性の条件を求めることを行った.その結果、系は波長の短い擾乱に対して不安定であることが分かった.活動銀河核やX線星の時間変動の原因と関係して興味がある.
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