1)移流優勢2温度系降着円盤の定常モデルの構築 光学的に薄い移流優勢円盤では、イオンの温度と電子の温度とが分離する2温度系円盤になることが考えられ、そのような2温度系モデルをつくることが、X線星や活動銀河中心核のスペクトルを説明する上に重要である。 前年度は、電子系の冷却過程として、bremsstrahalungのみを考慮に入れたモデルづくりを行ったが、今年度は、それより一般的場合へと拡張し、コンプトン、シンクロトロン過程による冷却も考慮に入れ場合を考察した。大学院の中村賢二氏が中心となって計算を行い、所期の目的である現時点で最も一般的な2温度系円盤モデルの構築に成功した。 2)移流優勢円盤の熱不安定性 移流優勢円盤の熱的振る舞いを調べることはX線星や活動銀河中心核の時間変動の解明の上に重要である。しかし、移流優勢円盤は幾何学的に厚いので、従来の標準モデルの熱不安定性を調べる処方がそのままでは使えない。前年度、別の解析法を使って、熱不安定性の解析を行なったが、解析方法に多少不適切なところがあったので、今年度はそれを訂正することを行った。結論は基本的には変わらない。すなわち、乱流による熱伝導を考慮に入れない場合には、円盤は局所的優乱に対して弱く不安定である。 3)降着円盤での乱流のモデル化 ケプラー円盤は単位質量当たりの角運動量が外に向かって増加しているために、線形擾乱に対して強く安定である。そのため、Balbusらは磁場の存在が円盤を乱流状態にするのに必須であると主張している。これに対して、筆者は必ずしもそうとは言いきれないことを主張し、磁場のない円盤での乱流状態の存在を示唆する乱流のモデル化を行った。
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