移流優勢降着円盤の定常モデルの構築 本研究の開始前から行っていたRamesh Narayan氏(Harvard)との共同研究による1温度系の移流優勢円盤のモデルづくりをまづ完成させた。引き続き、このモデルを拡張することを行った。すなわち、光学的に薄い移流優勢円盤では、イオンの温度と電子の温度とが分離する2温度系円盤になることが考えられ、そのような2温度系モデルをつくることが、X線星や活動銀河中心核のスペクトルを説明する上に重要である。2温度系移流優勢円盤のモデルづくりは、電子系の冷却過程として、bremsstrahalungのみを考慮した場合をまず初めに行い、コンプトン、シンクロトロン過程による冷却を考慮に入れた場合を次に行った。大学院の中村賢二氏が中心となって計算を行い、所期の目的である2温度系円盤モデルの構築に成功した。 移流優勢円盤の熱不安定性 移流優勢円盤の熱的振る舞いを調べることはX線星や活動銀河中心核の時間変動の解明の上に重要である。しかし、移流優勢円盤は幾何学的に厚いので、従来の標準モデルの熱不安定性を調べる処方がそのままでは使えない。本研究では、別の解析法を使って、熱不安定性の解析を行った。その結果、乱流による熱伝導を考慮に入れない場合には、円盤は局所的擾乱に対して弱く不安定であることを見いだした。 降着円盤での乱流のモデル化 ケプラー円盤は単位質量当たりの角運動量が外に向かって増加しているために、線形擾乱に対して強く安定である。そのため、Ralbusらは磁場の存在が円盤を乱流状態にするのに必須であると主張している。これに対して、筆者は必ずしもそうとは言いきれないことを主張し、磁場のない円盤での乱流状態の存在を示唆する乱流のモデル化を行った。
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