標準的な膨張宇宙における天体形成シナリオによると、10^7太陽質量程度のダ-クマタ-魂はまわりの物質との潮汐相互作用により角運動量を得て、ハイz(z〜数百)時にサイズ数パーセクの回転支持円盤を形成する。これがもととなって、クェーサー活動の担い手となる巨大ブラックホールをつくるかどうかは、円盤が自由落下程度で中心崩壊するか否かによる。 われわれは前年度の研究により、自己重力粘性円盤の進化を記述する、一連の自己相似解を等温の仮定のもと求めた。今年度はその研究を一層推進し、等温の仮定をはずしても、ある一定の条件のもと自己相似解が存在することを示した。また、密度の中心集中は、粘性の密度依存性に強く依存することも判明した。さらに、円盤ガスと宇宙背景輻射との相互作用が、円盤の粘性による進化にどう影響するかを調べ、一般にガスと輻射摩擦による角運動量喪失が粘性進化を促進し、確実に円盤中心のコア生成を早めることを見いだした。こうして、自己重力粘性円盤がハイZにおいて中心崩壊する可能性が、ますます現実的になった。 またわれわれは、ハイZクェーサーの中心構造を観測的に分解する、一つの極めて有効な方法をあみ出した。これは、クェーサー像の中心が星を通り過ぎることにより、クェーサー中心核の光のみが増幅される現象(重力マイクロレンズ)を用いるものであり、アインシュタインクロスと呼ばれる系に適用した場合、数倍のシュバルツシルト半径の空間精度で円盤の輻射特性が求められることが判明した。今後の観測結果が楽しみである。
|