本研究の基本的な目的は、ハ-ビッグ・ハロ-(HH)天体を多くの星形成領域においてできるだけ深く探査し、従来気づかれないでいた「巨大バウショック」や「ミニジェット」などの暗いHH天体を出来るだけ多数検出することにある。その手始めとして、今年度は次のことを目標とした。すなわち、オリオン領域Lynds 1641分子雲において、オーストラリアのUKシュミット望遠鏡による乾板上でこれまでの作業で検出してあった2000個を超える候補天体を精選してカタログとして取り纏めること、そしてその一部についてすでに取得してある多天体ファィバ-分光(同じくオーストラリアの3.9m英豪望遠鏡による)のデータを解析し、また新たに狭帯域撮像観測を行なうことにより、それらのうちどの程度が真正のHH天体かを調べることである。 この目標に対して実績としてはその第一段階を達成することにとどまった。すなわちL1641において1036個の確度の高そうなHH天体候補を精選し、それらの精密な位置を決定した。その中には巨大バウショックが4個、ミニジェットが10数個は含まれていると見られる。また、木曽観測所のシュミット望遠鏡およびインドの2.3m望遠鏡や1m望遠鏡による狭帯域撮像観測で10天体ほどの確認観測を行なった。しかしながらファイバー分光のデータの解析は手がつけられなかった。その一方で、以前にわれわれが南天に発見したきわめて巨大で明るいHH天体であるHH135/136について、^<12>CO(J=2-1)および^<13>CO(J=2-1)の観測データ(チリのSEST電波望遠鏡による)を解析し、双極高速分子流を伴っていること、その片側が分子雲コアに衝突して流れが曲げられているらしいことなど、注目すべき知見が得られた。この研究成果はフランスで開かれた国際天文学連合のシンポジウムで発表した。
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