本研究の主な目的は、ハービッグ・ハロー(HH)天体を代表的な星形成領域においてできるだけ深く探査してこの天体現象がどの程度の頻度で発現するかを明らかにし、あわせて従来気づかれないでいた「巨大バウショック」や「小ジェット」などの新種のHH天体の存在を確立することにある。研究期間開始までの段階で、深いシュミット乾板からオリオン領域のL1641分子雲において2000個以上、同じくL1630分子雲に約70個、NGC2264/MonOB1領域で約60個の小星雲を検出してあった。これらを精選し座標を測定してHH天体候補のカタログとして取り纏めて出版すること、そしてその一部について既に取得してある多天体ファイバー分光のデータを解析してどの程度が真正のHH天体かを調べることが具体的な目標であった。 この目標に対し、その第1段階の主要な課題であるL1641におけるHH天体候補の確定がほぼ終了、という結果にとどまった。それは、候補天体としての確度の高さを期すためにシュミット乾板の見直しを再三せざるをえなかったからである。この結果、701個が残った(うち巨大バウショック4個・小ジェット10数個)。この数でも従来の予想をはるかに超える結果で、天体物理学上の意義は大きい。ただし、外国の研究者が準備している既知のHH天体の総合カタログの出版が遅れているため、それとの比較が必要な関係上、このHH天体候補のカタログの出版もまた1・2か月程遅らせざるをえない状況にある。 本研究課題の本来の目的は予定研究期間中に十分に達成することができなかったが、代わりに関連する2つの研究を完成した。オリオン領域における主要な星形成過程から取り残された分子雲(remnant molecular cloudsと命名)約80個のカタログの作成、および南天に我々が発見した巨大なHH天体HH135/136において原始星からの高速ジェットが分子雲コアに衝突して流れが曲げられていることを電波観測から明らかにしたことである。
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