研究概要 |
現在軌道が決められていて,軌道長半径が35AU(海王星の軌道長半径)より大きいカイパ-ベルト天体はほぼ70個に達している。昨年度はカイパ-ベルト天体の長期軌道進化を議論するときに重要となる平均運動共鳴と古在レゾナンスのカップリング効果を数値的に調べた。この際カイパ-天体間の相互作用は無視してきたが、本年度は相互作用を取り入れた古在レゾナンスを重点的に調べた。 小天体の相互作用を考慮したときに現れる特異な現象として昇交点の連動がある。すなわち小天体はほぼ同一軌道面内を運動し、この軌道面が摂動天体の潮汐力によって歳差運動をするのである。この昇交点の連動は小天体の相互作用R_pと摂動天体による潮汐力R_tの大小関係に依存する。R_p>>R_tのときには昇交点の連動が起こる。この現象は理論的には惑星永年摂動論を適用して説明できる。R_p<<R_tのときには昇交点の連動は起こらず、古在共鳴効果によって軌道傾斜角と離心率は大きく変化する。R_pがすこしばかりR_tより大きいときには昇交点の連動ばかりでなく近日点の連動も起こる。この理論的な説明が次年度の大きな課題である。ここで見つけられた昇交点と近日点の連動現象とその理論的説明は天王星の楕円リングの保持メカニズムの説明に応用できるかもしれない。
|