1.Ia型超新星親星の寿命の銀河の化学進化からの決定 大質量星を親星とするII型超新星の爆発するまでの短いタイムスケールに対して、Ia型超新星となる親星が生まれて爆発するまでには、10億年程度の非常に長い時間を要することが知られている。ところが、このタイムスケールを正確に評価することはIa型超新星の爆発のメカニズムにおける不確定性のため非常に困難であり、未解決の問題として残されている。一方、爆発の際に放出される重元素の量や組成が超新星のタイプによって大きく異なることから、Ia型とII型の超新星となる親星の寿命の差は、銀河系での化学組成の変化のタイムスケールを与えることになる。私はその点に着目し、銀河の化学進化の観点からIa型超新星となる親星の寿命を評価することを試みた。太陽近傍の星の[O/Fe]は[Fe/H]の値に対して、[Fe/H]〜-1以降、[O/Fe]の値は減少し始めるが、これはIa型超新星が現れるようになり大量の鉄が放出され始めたことによる。この[O/Fe]のbreak pointから、Ia型超新星となる親星の寿命を評価することができる。私は太陽近傍の化学組成の頻度分布を同時に再現することにより、その寿命がおよそ15億年であるという結論を得た。 2.太陽近傍における星の初期質量関数の決定 私は太陽近傍における星の初期質量関数の傾き及び星の質量の上限値を、II型超新星における爆発的な元素合成、太陽近傍における化学進化及び質量光度比を計算することにより決定した。手順は、1.太陽近傍の古い星の[O/Fe]の観測値とII型超新星から放出される酸素と鉄の重元素量比を比較することから、星の質量の上限値をIMFの傾きの関数として求める。2.太陽近傍における化学進化を計算し、酸素のイールド及び星形成史を求める。3.1の結果と酸素のイールドからIMFの傾き・星の質量の上限及び下限値の相関を求める。4.最後に、3の結果と2で求めた星形成史を用い太陽近傍の質量光度比を計算し、観測と比較することからIMFの傾きを決定する。以上より、IMFの傾き:1.35±0.1及び星の質量の上限値:50M_<【of sun】>という結果が得られた。
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