原始惑星系円盤の降着現象の観測的研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08640339
• 研究種目: 基盤研究(C)
• 研究機関: 国立天文台
• 研究代表者: 林 正彦 国立天文台, 大型光学赤外線望遠鏡計画推進部, 助教授 (10183914)
• キーワード: 星形成 / 惑星系形成 / 原始星 / 動的収縮 / 原始惑星系円盤 / 降着円盤

研究概要

本年度は、原始星外層部での降着現象の観測的研究を進めた結果、新たに2個の天体(L1551-IRS5とIRAS04368+2557)において動的降着の直接検出に成功した。L1551-IRS5は原始星のプロトタイプとして著名な天体であり、これまで10年以上にわたって外層部での動的降着が探索されていたが検出できずにいた。国立天文台野辺山ミリ波干渉計の優れた画像合成能力と高い角分解能により、我々はこの天体から初めて動的降着を検出し、L1551-IRS5が名実ともに形成されつつある星、すなわち本来の意味においての原始星であることを証明した。また、IRAS04368+2557は分子雲コアに非常に深く埋もれた天体(いわゆるクラス0天体)であるために、これまでその構造が全く理解されていなかったが、我々の観測によりこの天体がほぼ真横から見ている原始星であることが分かった。その結果、原始星外層部は直径と厚みの比が数対1程度のぶ厚いものであることも判明した。この両天体とも、外層部の半径1000天文単位程度の位置で動的降着とともに回転が検出されており、回転速度から見積もると中心部に半径100天文単位程度の回転平衡円盤(すなわち原始惑星系円盤)が形成されるはずであり、また実際にそのような原始惑星系円盤が検出されている。このことから、惑星系形成の母体となる原始惑星系円盤が、原始星外層部の動的降着により形成されていくことが確実となった。

研究成果

• [文献書誌] Oka,T.et al.: "CO(J=2-1)Line Observations of the Galactic Center Molecular Cloud Complex. I.On-Plane Structure" Astrophysical Journal. 460. 334-342 (1996)
• [文献書誌] Ohashi,N.et al.: "The Nobeyama Millimeter Array Survey of Young Stellar Objects associated with the Taurus Molecular Cloud" Astrophysical Journal. 466. 317-337 (1996)
• [文献書誌] Ohashi,N.et al.: "Possible Infall in the Gas Disk around L1551-IRS5" Astrophysical Journal. 466. 957-963 (1996)
• [文献書誌] Momose,M.et al.: "Dispersing Cloud Core around T Tauri" Astrophysical Journal. 470. 1001-1014 (1996)
• [文献書誌] Hayashi,M.: "Observations of Protoplanetary Disks" Basic Physics of Accretion Disks. 247-252 (1996)
• [文献書誌] Ohashi,N.et al.: "Interferometric Imaging of IRAS04368+2557 in the L1527 Molecular Cloud : A Dynamically Infalling Envelope with Rotation" Astrophysical Journal. 475. 211-223 (1997)