研究概要 |
昨年度までの研究により、HL Tau、L1551-IRS5、IRAS 04368+2557の3天体で、原始星エンベロープでの動的降着を直接検出することに成功した。今年度は、新たにIRAS 04169+2702とIRAS 04365+2535について行った観測をもとに、原始星エンベロープの統計的性質についての研究を進めた。その結果、0.4パーセク(80,000天文単位)から100天文単位にわたる分子雲コアから原始惑星系円盤にかけてのサイズスケールで、ガスの比角運動量と半径との間に興味深い関係があることが分かった。これは、半径が0.03パーセク(6,000天文単位)から0.4パーセク(80,000天文単位)の間では、ガスの比角運動量がサイズの1.6乗に比例するのに対して、半径が200天文単位から2,000天文単位の間では、ガスの比角運動量は半径に依存せず、ほぼ10^<-3>km s^<-1> pcで一定の値を取るものである。この変化は、半径にして約0.03パーセクの箇所で起こっており、この半径より内側のガスが動的に降着することにより、ガスの比角運動量を一定に保っていることで説明できる。このことは、原始星エンベロープ内でのガスの動的降着が何らかのメカニズムにより半径0.03パーセク程度で始まり、その結果として、ガスがその半径で保持していた比角運動量を維持することによって、最終的に大きさが100天文単位程度の原始惑星系円盤が形成されていくことを示している。すなわち、我々の太陽系の大きさや、あるいは今まで観測されてきた原始惑星系円盤の大きさが約100天文単位であることを、星形成の観点から自然に説明できることになる。
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