研究概要 |
本研究では、星形成時の動的な降着現象の観測的研究と、そのような降着を通して原始惑星系円盤が形成されていく過程を研究した。 その結果、平成8年度の研究では、新たに2個の天体において動的降着の直接検出に成功した。両天体とも、エンベローブの半径1000天文単位程度の位置で動的降着とともに回転が検出されており、回転速度から見積もると中心部に半径100天文単位程度の原始惑星系円盤が形成されるはずであり、また実際にそのような原始惑星系円盤が検出されている。このことから、惑星系形成の母体となる原始惑星系円盤が、原始星エンベローブの動的降着により形成されていくことが確実となった。 また平成9年度の研究では、新たな観測をもとに原始星エンベロープの統計的性質についての研究を進めた。その結果、エンべロープの半径が0.03パーセク(6,000天文単位)以上では、エンベロープのガスの有する比角運動量が半径の1.6乗に依存するのに対し、0.03パーセク以下ではガスの比角運動量は半径に依存せず、ほぼ10^<-3>kms^<-1>pcで一定の値を取ることが分かった。このことは、原始星エンベロープ内でのガスの動的降着が、何らかのメカニズムにより半径0.03パーセク程度で始まり、その結果として、ガスがその半径で保持していた比角運動量を維持することによって、最終的に大きさが100天文単位程度の原始惑星系円盤が形成されていくことを示している。すなわち、我々の太陽系の大きさや、あるいは今まで観測されてきた原始惑星系円盤の大きさが約100天文単位であることを、星形成の観点から自然に説明できることになる。
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