1.プログラムの開発とテスト 強い相互作用をする素粒子はクオークとグルオンから構成されており、これらクオークとグルオンは単独で取り出すことは出来ないと考えられている。この閉じ込めと呼ばれる現象は、分子/原子/原子核/核子という階層構造において、構成物質を分離して研究してきた自然界の認識の方法の変更を迫るものである。グル-オンの性質を調べるためには、近距離から遠距離までの振る舞いを調査しなければならない。この目的のため48×48×48×64というこれまでに計算されたもっとも巨大な格子上で計算のシミュレーションを並列ベクトル型という新しいタイプのスーパーコンピュータである航空宇宙技術研究所の開発した世界最高速の計算機「数値風洞」の上で開発した。 2.結果 グル-オンのプロパゲ-タの計算結果は以下のような特徴を示している:(1)質量ゼロの自由プロパゲ-タでは結果をフィットすることはできない、(2)虚時間が増大すると、プロパゲ-タはほとんどゼロになる、(3)実効質量は虚時間が大きくなると増大する。すなわち、グル-オンは通常のポールを持った粒子としての記述はできないが、それは距離が大きくなるに従って質量が増大していく粒子のように振る舞う。これは「閉じ込められた粒子」という描像とよく一致する。さらに統計精度を上げ遠距離でのグル-オンの振る舞いを確立するために、現在大規模シミュレーションを進めている。
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